古川幸太郎さんの短歌(京都文芸より)
こぼれたる種より生えし朝顔に細竹立てて蔓巻くを待つ 2017.8.21
かぶりつく西瓜に頬を濡らしつつ里帰りの児は口もきかずに 2017.9.4
集落の小さき家具屋の店先に無人販売のイチジク置かる 2017.10.9
少年の声となりたる児の電話久しく逢わねば敬語の混じる 2017.10.24
鴨遊ぶみずうみしずか沖合いを滑るごとくにミシガンのゆく 2017.12.4
ひこばえも枯れし冬田に降り来たる野盗のごとき鴉の群れは 2018.1.15
捨てられてハンドル錆びし自転車を弔うように綿雲の積む 2018.2.6
スコップで四角に切りて放り上げ深き雪搔く納屋までの道 2018.2.19
桜木の花芽やさしく抱くように早春の陽はおだやかに照る 2018.3.26
馬鈴薯を植えしは確か今頃と去年の日誌を繰る春の夜 2018.4.2